介護施設でヘルパーが行う主な業務

介護施設でヘルパーが行う主な業務には、身体介護と生活援助の2つがあります。
これは訪問介護の仕事になりますが、一方で、訪問でなく、施設の仕事を行うという両方の側面があります。ここを混同する方がいらっしゃいますが、覚えておくと良いでしょう。

訪問介護としての身体介護には、食事の介助、入浴の介助、排せつの介助、移動の介助、着替えの介助、洗面の介助などが含まれます。

生活援助には、買い物代行、調理、洗濯、掃除、ゴミ出し、ベッドメイキングなどが含まれます。ただし、ヘルパーができることは介護保険法で定められており、業務外のことはなるべくやらないほうが良いです。また、ヘルパーにできることとできないことを施設の入居契約時に入居者やご家族に明確に説明することが大切です。以下に項目別に詳細を示します。

一方で、施設内の掃除や片付けなどは、訪問介護とは異なり、施設維持の仕事になります。
施設の窓ふきや廊下掃除、物の移動などはすべt施設の仕事になります。

介護施設で介護や支援を行う際の事前準備

制服やエプロンの着用。爪は伸びていないか、時計はしていないかなどのチェック。
移乗介助時等に胸ポケットに装着しているボールペン等の有無、これらは移乗介助時に施設利用者に傷などをつけないようにします。もし、ボールペンが相手の目に刺さったらゾッとしますね。
次に体調の確認を行います。顔色や発汗の有無、室温のチェック等です。
※以降、施設利用者で被介護者のことを「利用者」と敬称を取って呼びます。

介護施設での食事介助

食事を摂る際に必要な準備や手伝いを行います。身体の不自由な方によって介護内容は異なりりますが、上手に促しながら楽しく食事を過ごしてもらうのが良いでしょう。食前・食後の服薬介助も必要になります。

介護施設での食事介助には、食事の介助、食事前の準備、食事後の片付けなどが含まれます。食事介助においては、被介護者がスムーズに食べられるように、正しい姿勢や声掛けの方法などを知ることが大切です1234。

食事介助の手順

①食事前に被介護者が手を洗うように促す。
また、専用のスプレー等で消毒を行います。アルコールの他、無害な専用薬品を希釈しスプレーを使用することが多いです。
②食事をする場所をきれいにする。
テーブルや椅子を整えます。その時、事前にエプロンがけをします。
③食事をする前に被介護者がトイレに行くように促す。
施設の場合は、居室から食堂スペースへの移動前に声掛けで促し、トイレ利用します。尿パットを利用している方は、パット確認と交換を行います。
④食事前に利用者が座りやすい姿勢になるように誘導する。
⑤食事前に利用者が口の中をきれいにするように促す。
⑥食事前に利用者が水分を補給するように促す。
食事をする際は、スプーンやフォークなど適切な道具を使用します。
食べ物の大きさや硬さを考慮し、主食(ご飯)は、お粥やミキサー食にすることもあります。
副食(おかず)は刻み、適量の食べ物を与えます。こちらもミキサー食にすることもあります。

⑦飲み込みやすいように、飲み物と一緒に食べ物を与える。
⑧食べ物が口の中で詰まらないように、適切なペースで食べてもらう。
⑨食べ終わった後は、口の中をきれいにする。
歯ブラシやスポンジブラシを使用することが多いです。義歯の方については、義歯固定剤で固定している場合は、昼食後は歯磨きとウガイのみ行うことが多いです。
義歯に固定剤を使用していない方は、義歯の洗浄を行い、利用者にはウガイをしてもらいます。
⑩テーブルや椅子を整える。
以上が一般的な手順です。ただし、被介護者の状態や環境などに合わせて臨機応変な対応が求められます。

服薬の介助

食前・食後の服薬のお手伝いをします。
ヘルパーはその薬を利用者に服用してもらいますが、利用者に合った方法を選択する場合もあります。例えば、薬だけでは飲むことができない方には、トロメリンを使用して飲みやすくしたり、主食や副食、飲み物に混ぜて服薬してもらうケースもあります。

手の不自由な方向けに薬杯を使用をしてみましょう。
介護スタッフが薬をひらに乗せた場合、手が傾くことで1個だけ床に落ちて、探すのに一苦労することもあります。

入浴の介助(入浴介助)

通常は体調確認を行う際、バイタルチェックから行います。次に、入浴道具の準備や浴場に移動を行い、更衣室での介助と入浴のお手伝いを行います。

施設の形態にもよりますが、数人が一度に大きな湯船に入浴するケースや、個室に個室が入浴を利用する場合があります。一般的には個室での入浴時は毎回、湯を交換します。

毎回の皮膚確認や体重測定を行うこともあります。一般的には、車いすの方は毎回計りますが、比較的健康な方なら、月初に1回のみ測定する施設もあります。

体重計算

衣類を着た状態の体重マイナス1kgのことが多いです。その都度、個室入浴を行う場合は、利用者ごとに浴室内を洗いし、綺麗な浴室と新しい湯を張るようにします。(施設にもよりますが、個別訪問をするという概念です)

浴槽に入場合、シャワー浴のみの場合など利用者の身体能力によって異なります。
シャワーや浴槽内の湯音に注意しながら介助します。シャワー浴の場合は身体が温まりにくいので、足浴を同時にすると良いです。また、かけ湯はたっぷりと行い、良く温まっていただきます。

浴室からあがる少し前からドアを少し開けておき、浴室と脱衣室との温度差を少なくしておきます。

車いすを利用した方の体重測定

車いす利用者専用の体重計で、本人が座ったままの総重量を計り、その後、衣類等+車いすの重量を計った値を引いて計算します。(裸の状態での正確な体重がわかる)

軟膏・クリームの塗布

入浴後に体を綺麗に拭いたら、必要な軟膏やクリームを塗布します。乾燥肌の方には保湿成分の入ったクリームやジェルタイプのものを塗布すると良いです。場合によっては白色ワセリンを使用します。

爪切り

入浴介助に爪切りがセットとして計画されている場合が多いです。
介護職員が利用者の爪切りを行うためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

・爪そのものに異常がない。(巻き爪はできません)
・爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がない。
・糖尿病などの疾患に伴う専門的な管理が必要でない。

以上3つの条件をすべて満たすと、介護職員は利用者に対して爪切りや爪ヤスリが行えます。ただし、利用者の状態や環境に合わせて臨機応変な対応が求められます。

爪切りは医療行為から除外されており、介護職員でも行うことができますが、介護保険法で定められた範囲内で行うことが望ましいです。

以前は医療行為とされていましたが、平成17年に医療行為の見直しが行われ、爪切りは医療行為から除外されました。

排せつの介助(排泄介助)

トイレやおむつ交換など排泄に関する手伝いを行います。排泄物を包むような新聞紙やビニール袋を用意しておき、ケース・バイ・ケースに対応します。陰部洗浄用のボトルを使用し、ボトル内に温めのお湯を入れて介助することもあります。また、清拭タオルで拭き取る必要もあります。

ベッドに寝たままの排便では、衣類やラバーシーツ等に汚染した場合は速やかに清拭し、更衣着に汚れた衣類を洗濯します。色物衣類はカラー専用の漂白剤を使用しましょう。白物専用の漂白剤をカラー生地に使用すると、ブチになり悲惨なことになります。

血液が付着した場合は、冷水で石鹸で洗うとすぐに落ちます。(温水を使用すると血液の化学反応で汚れが落ちません。)
リハビリパンツを使用して汚染した場合は、左右のつなぎ目を力を入れて破り取ることができます。

移動の介助(移動介助)

車椅子や杖を使った移動時の手伝いを行います。車いすの場合は、移乗の際に転倒しないよう、見守りや、介護を行います。ステップに足を乗せて頂き、安全に移動できるようにします。気温にもよりますが、カーディガンや膝掛も必要になります。

杖を突きながら歩行する方にはヘルパーが見守りの一部介助をします。くれぐれも、転倒しないよう見守りましょう。

着替え(更衣介助)

衣服の着脱や着替え時の手伝いを行います。本人の着たい衣類を尋ねてから介助します。
身体の不自由な方、例えば、左麻痺の方は不自由な患側から静かに着ていただき、その次に健側(健康な手のほう)を介助します。痛がらないように静かに、声掛けながら行います。

洗面の介助

歯磨きや洗顔など洗面時の手伝いを行います。事前に温タオル(蒸しタオル)を準備しておき、手渡しや、自分でできない場合は介助で拭いてあげます。口腔ケアもワンセットで行う場合がほとんどです。

整容

起床介助や入浴介助時にセットとして計画されていることが多いです。
男性なら髭剃りが含まれますが、カミソリは危険なので電気シーバーを使用します。
へヤーブラシを使用して髪を整えます。場合によってはスキンクリームを手に乗せてあげるのも良いです。

買い物代行(買い物支援)

本人と同行して買い物をしたり、本人に代わって行います。施設によっては預り金を準備しておき、そのお金で購入します。原則として、近隣での購入となります。
訪問介護計画に買い物援助の項目を入れている場合は、プランに沿った曜日や時間に行います。
それ以外の買い物については、施設サービスにするのか、別途料金を頂くかになります。
入居契約時に説明をしておきましょう。

施設での調理

食事の準備や調理を行います。ヘルパーがどの程度手伝うのか、それとも専門業者や調理人を雇用しているかによってやり方が異なります。

施設の洗濯

衣服やタオルなどの洗濯を行います。シーツや布団カバーなどは、数回に一度選択する場合がほとんどです。稀に、利用者が個室の洗面台等で衣類の洗濯をしている場合がありますが、施設によっては禁止しており、生活援助時に行うか、入浴介助時に行ったりします。

居室の掃除

部屋やトイレなどの掃除を行います。
居室内の用と、トイレ用でバケツや布巾等、別々に道具を準備して行います。

ゴミ出し

生活ごみや資源ごみなどの分別後、ゴミステーション等の所定の場所にゴミ出しを行います。

ベッドメイキング

ベッドメイキングや布団干しなど寝具関連の手伝いを行います。利用者によってはベッドの枕元や、スペースに色々な生活用品を置いている場合があります。それらは禁止ではありませが、掃除の際はもとに合った通りにしておくのが原則です。
また、ギャッジアップ時に悪影響が出そうなら、別の置き方を提案しましょう。

以上が主な業務内容です。ただし、ヘルパーができることは法律で定められており、業務外のことは避けるようにしてください。また、ヘルパーにできることとできないことを明確に説明することが大切です。